駅までの、あの七分
解散した瞬間から改札までの間に、だいたい答えは出ている。出ているのに、認めるまでに三日かかる。
「今日はありがとうございました」
そう言って頭を下げた相手が、思ったより早く背を向けた。
早いな、と思った。まだ二秒くらいは間があってもよかったんじゃないか。
そこから駅までは七分だった。
歩きながら、今日のことを最初から順番に思い出していた。
待ち合わせで五分待たせたこと。店に入って最初の三十秒。
「お仕事なにされてるんですか」って、たぶん俺が二回聞いたこと。
何がまずかったかは、もう分かっている
不思議なもので、あの七分の間に、答えはだいたい出ている。
出ているのに、素直に認めるまでに三日くらいかかる。
その三日のあいだ、自分に都合のいい解釈を探し続ける。
疲れてただけかもしれない。
元々そんなに愛想がある人じゃないのかも。
というか俺、そんなに悪くなかったよな。
全部、あの七分の時点で否定されている。
分かっているのに、なかったことにしたい。
いちばん認めたくなかったこと
正直に書くと、あの日いちばん認めたくなかったのはこれです。
俺は「今日をどう終わらせるか」を、一度も考えていなかった。
どこで待ち合わせるか、どの店に行くか、何を話すか。
そこまでは考えていた。ちゃんと調べたし、ちゃんと予約もした。
でも、終わり方だけ何も決めていなかった。
だから最後、店を出たところで会話が完全に止まって、
「じゃあ……」「はい……」みたいな、あの数秒が生まれた。
あの数秒で、たぶん全部持っていかれた。
翌日からやったこと
それ以来、店を出る前に一回だけ考えるようにしています。
今日、どこで終わらせるか。
具体的には、店を出たら駅まで一緒に歩かない。
店の前で「今日は楽しかったです、ありがとうございました」を先に言ってしまう。
まだ喋りたいくらいで切る。
これをやるようになってから、正直まだ劇的に何かが変わったわけではないです。
ただ、あの七分の惨めさは減りました。
答え合わせをしながら歩く時間が、少しだけ短くなった。
それだけでも、けっこう違います。